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2018年7月10日火曜日

シリーズ『長期縦走のすゝめー山にフィット編ー』

シリーズ『長期縦走のすゝめ』第二弾、山にフィット編。

第55期筋肉大臣マグマ大塚が山にフィット編の不要さに思いをはせながら責任を持って執筆します。

「山にフィットする」という耳慣れない言葉。『日本国語大辞典』によると、「山にフィットする」には①登山と真摯に向き合い、樹林帯急登さえ心地良くこなすこと②登山を通して自己存在の矮小さに気づき、自身を自然の摂理の中に位置づけられること、の二つの意味がある。当然、縦走登山を試みる者には「山にフィットする」ことが求められる。今回は計画段階から登山後に至るまでの、「山にフィットする」方法をお伝えします。

目次
1、参加前のフィット
2、登山口に至るまでのフィット
3、登山中のフィット
4、企画後のフィット


1、参加前のフィット
様々な活動を行う探検部だが、ともすれば「自分では企画をたてず誰かの企画に参加するだけ」の受動的な状態に陥りやすいのは一つの事実。例え一参加者であろうと主体的に参加することが、後々のフィットにつながる。ここでは企画前のフィット方法を紹介します。

a.ルート、地点名を覚える
 一見当たり前の行為だが、当たり前のことをできない人間を僕は数多く見てきた。(自身含む)せっかく企画書を作ってもらったのだから、ルートくらいはしっかり覚えよう。またルートを覚えておくことで、滑落や道迷いなどではぐれ、遭難してしまった場合でも、自分の位置の特定に役立つ。(と思う。遭難したことないので分からない)「山をナメない」心意気を常に持つことが大切です。
 次に地点名についてだが、難読の山名、地点名は非常に多い。例えば、あなたは次に挙げる山の名前をいくつ読むことができるだろうか。

光岳
飯豊山
巻機山
皇海山
武尊山
四阿山


 正解は、上から「てかりだけ」「いいでさん」「まきはたやま」「すかいさん」「ほたかやま」「あずまやさん」。登山者ならば「とりあえず百名山に登ってみたい!」と思う方は少なくないと思うが、上の6つは全て百名山。有名な山でさえ難読であることが分かっていただけただろう。ではなぜ難読山名、地点名を覚えることがフィットにつながるのか。これは単純に楽しいからだ。難読地名を読んで、読めない人間にマウントをとる。このマウンティングが、あなたを「おれ、なかなか登山やってるな」という気分へ誘い、フィット指数を高めてくれるのである。今現在も、ぼくは画面の向こうで山の名前を読めず苦悶の表情を浮かべるあなたに対して優越感に浸り、週末の後立山連峰縦走に向けての気分を高めている。

b.深田久弥『日本百名山』や、登山雑誌を読む 
 登ってみたくなりがちな百名山だが、これは登山家で作家の深田久弥が彼の主観と偏見で‘64年に『日本百名山』で選定したもの。探検部では百名山に登る企画がたちがちだが、深田の『日本百名山』には当然百の山の歴史や深田の所感が記されており、ここでも知識マウントの材料を得ることができる。

750円(税別)
僕は目次にずらっと並ぶ百名山に、斜線を引いて自分の登った山をカウントしている。
さすがは昭和の文豪だけあって、文章もまあまあ上手いので購入すべきだ。
 つぎに登山雑誌についてだが、『山と渓谷』『ワンダーフォーゲル』『PEAKS』『岳人』など様々あるので、色々試してみよう。長期縦走となれば日本で思いつくのは当然日本アルプスだが、『夏山JOY 2018』ワンダーフォーゲル7月号増刊などは、アルプスのメインルート情報が広く浅く載っている。

1111円(税別)
企画で登る山の周辺の山も把握しておくことが、稜線でのフィットにつながり、山座同定にも役立つ。『日本百名山』とは違い、大判の写真で山への気持ちを高ぶらせてくれる点でも登山雑誌は高評価。実際ぼくもこの頃は、『夏山JOY 2017』の鹿島槍や針ノ木のページばかり読んでいる。


2、登山口に至るまでのフィット
 企画登山ではレンタカーで目的地に向かうことが多い。ここでは阪大から登山直前に至るまでのフィット方法をお伝えします。

a.車内でのフィット
 若いんだから大騒ぎすべき。itunesやspotifyで好きな音楽をダウンロードし、車内でブチアガろう。ブチアガるといえば当然ノリノリのナンバー。僕はクイーンのDONT STOP ME NOW を、車内で五回は流し、髪が長く髭のないフレディになりきることでボルテージを高めている。(dont stop me dont stop meの部分のヘイヘイヘエェイ!!アァイライキイッ!!ハバグッターイグッターイゥゥムなど、随所でフレディを降霊させる)

フレディが降りているユウジ

また、車内でのブチアガり具合が登山前夜の睡眠にもつながる。車内で積極的に疲労することが、入眠難度をさげるのだ。
予定睡眠時間が三時間を切る場合は車内でも睡眠を


b.入眠場所でのフィット
 企画では登山口の駐車場や、近辺の道の駅、サービスエリアでの睡眠を余儀なくされる。実際、「山にフィットする」ためにはこれが最も重要で、「山にフィット編」の執筆内容もぶっちゃけこの項のみで良いと思われるくらいである。

野宿を楽しもう
とは言うものの特に言うこともない。ただひたすら真摯に、睡眠と向き合う。

これはあまり眠れなかったせのかな。かわいい。


3、登山中のフィット
 「山にフィットする」の本懐である登山中のフィット。ここでのフィット具合が縦走の楽しさを左右する。

a.樹林帯でのフィット
 縦走登山と言えばやはり森林限界を超えた稜線での展望だが、樹林帯でのフィット指数はそのまま稜線でのフィット指数につながる。そして樹林帯急登をフィットしながら乗り切るには「コツコツ登る」ことが最重要である。ここで、普段よりも速いペースで「もうすぐ稜線かなあ」と常に思いながら急登を登ることを余儀なくされた昨年の谷川岳でのマグマ大塚と、普段よりも少し遅いペースで「コツコツ」急登を登った今年の谷川岳でのマグマ大塚の表情を見比べてみよう。

去年。疲れの色。もみあげも枝分かれしている。
今年。余裕。
当然、班で登るのであれば最も体力がない人間のペースに合わせて登山は行われるべきだ。さらに「コツコツ」の神髄はペースの速い遅いにとどまらない。「もうすぐ稜線かなあ」という期待をできるだけ最小化しつつ、ただ目の前の斜面に一歩一歩足を踏み入れていくことこそ、「コツコツ」だ。コツコツ教では歩を進めつつ、自己の内部と対話し、真の解脱への到達を目指している。ひたすら登ることに集中すると、自然にあなたは山にフィットし、樹林帯急登をいとも簡単にこなすことができる。

b.稜線でのフィット
ええなあ

はよ山行きたい

ええやん
晴れてたらバチバチにフィットする。山座同定がたのしい。雨ならかわいそうに。

c.テン場でのフィット
 みんなで飯つくったりすると楽しいので自然にフィットする。睡眠時間は重要。二泊以上の縦走となると毎日10時間は眠りたいところ。10時間寝ても眠気は感じるが、ショートスリーパーでもない限り短時間睡眠は翌日のパフォーマンスに一番響く。

このようにやや臭い場合もあるが、できるだけ早急に寝る


d.樹林帯下山でのフィット
 正直ぼくは下山でフィットしたことがないので何も書けない。ちょっと速いペースで降りると楽しかったりするらしい。

e.雨天時のフィット
 雨天時のフィットは不可能に近い。青空の下ひろがる山々こそ至高であり、真っ白で何も見えないなか雨に打たれ歩を進めるのは拷問といって過言ではない。しかし、そうした状況をポジティブに捉えなおすことが肝要である。「山にフィットする」とは、自然の摂理の中に矮小な自己を位置させる行為である。様々な自然、青空だけでなく、厳しい自然の中に自らを置くことこそ、本質的なフィットを追求できる絶好の機会だ。眼前で起こることをあるがまま受け入れ、自身の位置づけを再確認するのである。


4、企画後のフィット
 下山後は温泉と飯を楽しみ車に揺られて帰阪する。家につけば即座に入眠し、翌日には山の上での日々を思い出し、必要に応じて用具をケアし、次の山の計画を練る。この繰り返しが、あなたをますます山にフィットさせてくれるだろう。


次回、長期縦走のすゝめー美容・服装編ーをお送りします。

出演
ゴウキ大塚、マグマ大塚、竹野、田中、山本、内堀、大夢、大久保、セアカツノタダーキ